極楽せきゅあブログ

ときどきセキュリティ

パットメセニーグループ

参ったなあ。
パットメセニーを聴き始めてかれこれ四半世紀になるんですが、いつもその創造性っていうのには圧倒されてます。しかし、今回ほどその凄さを実感したことは無いかもなあ。
とにかく一曲目。これがもう。
一曲目はいつ始まったのか?
会場は東京国際フォーラムだったんですが、あちきは海浜幕張から京葉線東京駅を経由して地下から東京国際フォーラムにアプローチ。さっくり早めに着いたので吹き抜けのベンチで仕事でもしてっかなー、と思い地上に出て腰掛けました。実はそのときに一曲目が始まっていたんです。
新作CD、The Way Upの冒頭、シーケンサーSEと街のノイズのところが、ごくかすかに国際フォーラムに流れていたんですよ。それが始まりでした。
開場時間が近づいたのでホールの下のフロアに入ると、今度は明確にその音が満ちていました。しかし、騒がしくなく、あくまで満ちているだけ。それを聴きながら、係員さんの案内やら人々の発するノイズやらを合わせて感じている、その時点でもうすでに術中に填っていたってわけですね。
コンサートホールに入ると、そこにもその音は満ちていました。そして人がだんだん入ってきて、コンサートの時間が近づき、ふいに正面のスピーカーからその音がこぼれてくるようになりました。もうそうなると、すっかり聴衆は始まりを予感し、一曲目にその曲が来ることを漠然と感じています。
そしてパットメセニーがおもむろに登場し、ソロを弾き始めます。
そのソロはわれわれの予感と異なり、一曲目とは無縁のように聞こえる予定調和的ではないものでした。しかし、うっすらとあの曲の繰り返されるモチーフのメロディーが聴けたと思ったら、ホール中央の通路やステージからばらばらっとメンバーが登場してきます。縦笛を吹きながらステージを目指し、その間パットはモチーフをさらに強く打ち出してきます。
そして一曲目が始まります。

このしびれまくった演出のあと、あちきはもうあの70分を超える大曲をフルにやるであろうことを確信しとりました。そしてそのみなぎるテンションに心を奪われているうちに、これまでパットメセニーがグループの音楽で試みて、消化して提示してきたものがたたみかけるように繰り出されてきます。あちきはそこで他の聴衆のことをちらっと考えました。70分行くぞ、ついてこれるかい?
しかしそりゃあ大きなお世話ってものでしたね。日本のパットメセニーな方々はつくづく侮れません。これまでグループが提示してきたものをしっかり受け止めて、反応しています。
まさに70分オーバー、上等、という感じで。
独特の変拍子、突如訪れる場面転換のコントラスト、そしてコード展開のスピード感、そして特筆すべきなのは、ときにコラージュのようにカラフルなこの曲のたたみかけの仕掛けの見事さ。間を置かず、テンションを保つタイミングで波のように次々と攻め寄せてきます。
そしてその長編小説のように重厚な曲のエピローグが終わったとき、コンサートはまだ半ばも終わっていないのに、聴衆は熱狂的に大拍手していました。そして、一人また一人とスタンディング。まだ前半なのに。そしておそらく、「前半で、終わってもいないのに、スタンディングするシチュエーションではないのに」ということは聴衆のみなさんすべて感じていたことだと思いますが、それでも総立ちになってました。それほど凄まじかった。
パットも感激した面持ちで、「ここに、この場所に来て演奏することができて幸せです。わたしはこの場所で演奏することを愛してます」と言ってます。likeじゃなくてloveですよ。まあ、ファースト・サークルの冒頭、超変拍子の手拍子を苦もなくこなす日本のファンですからね。世界中で一番反応が良いはずでさぁね。
もうこのツカミで圧倒されました。

いいコンサートだったなあ。