極楽せきゅあブログ

ときどきセキュリティ

ナショナルサイバートレーニングセンターのお仕事について

考えてみたらしっかりとしたジョブディスクリプション無いなって思ったので、ここらで一発情報通信研究機構NICT)のサイバーセキュリティ研究所ナショナルサイバートレーニングセンターでのお仕事について文章にしてみます。
ナショナルサイバートレーニングセンター(略称ナショトレ)では現在、実践的サイバー防御演習「CYDER」と、実践サイバー演習「RPCI」と、若手人材育成「SecHack365」という三つの事業を行っています。研究機構の研究所なのに事業。ここらへんがまず、NICTの他の研究室等と違うところ。事業の内容はどれも広い意味での教育事業で、お仕事の中身は教育サービスそのものです。
ナショトレ内にはサイバートレーニング研究室とサイバートレーニング事業推進室という二つの組織があります。事業推進室の方はその名の通り事業を推進していますが、CYDERは年100回以上の集合演習を全国47都道府県で開催し、さらに年2種類のオンラインコースも開催、RPCIも年10回の集合演習、SecHack365も年8回のイベントを開催するので、それに関わる契約・調達、実施事業者等複数ステークホルダーとの調整など膨大な事務手続き、作業を行っています。また、広報活動として各地イベントへの出展やWebコンテンツ、パンフレットやチラシ、グッズ等の制作、メールマガジンの制作配信、学校や総合通信局訪問等の直接・間接営業も行っています。国研という立場での評価資料の作成やら各種委員会対応やら各種視察対応というのもまーまーたくさんあります。
研究室の仕事は幅広く、まず演習コンテンツの企画と制作、演習実施時の品質担保的な意味でのチェックなどを行っています。ナショトレが展開する演習はオフライン・オンラインともにCYDERANGEというサイバーレンジ(演習環境)を独自開発してその上で展開しているので、その開発の企画と実施、メンテナンスも行っています。関連して各地での演習開催における技術的なサポートも行っています。こちらも実施事業者さんとのやり取りが多数。
さらに研究室は研究もしています。よくごっちゃにされてしまいますが(笑)直接的にサイバーセキュリティに関する研究を行っているわけではありません。直接的にサイバーセキュリティに関する研究は同じサイバーセキュリティ研究所の中のサイバーセキュリティ研究室や、サイバーセキュリティ基盤研究室が行っています。ユニークな研究をたくさんしているのでご興味のある方はぜひ覗いてみてください(笑)。ナショトレのサイバートレーニング研究室でじゃあどんな研究を現在しているのかというと、教育効果の可視化とか、議論スキルや検索など情報収集スキルの可視化、評価など、テクノロジーを用いた教育に絡む研究や、アンケート結果等、広く言えばひとが生み出す文章の分析研究などを行っています。

国研ならではと言いますか、最初は有期で1年更新の契約ということになるので条件良くないなーと思われるかも知れませんが、馴染んで慣れる期間も当然考慮されますし、よほどのことが無ければ(はっきり書かない方が良い気がするので以下略(笑))。また修士で入って博士を取るという流れも可能ですし、学生さんならばお互いのお試しのような意味合いも含めてリサーチ・アシスタントという形をとってからの就職、ということも可能です。
上記のお仕事、どれかに興味がある方は、ちょっと応募を検討してみていただけると幸いです。なお、フルタイムではない働き方にも対応しています。

このページ下部の公募情報にある「有期研究員」「有期研究技術員」「有期一般職」のナショトレのエントリーから公募情報がGETできますのでご検討ください>興味がある方
またはあっしに何らかの形でDMくださいヽ(´ー`)ノ

取材依頼でホワイトハッカーを育成してるの?と聞かれたので

ナショナルサイバートレーニングセンターはいわゆるホワイトハッカーは育成してません、とレスしたら、「いやー広義のホワイトハッカー育成じゃないの?」と粘られたので以下のようにレスしました。

 

セキュリティの仕事、特に「ハッカー」という称号が付くような仕事の領域というのは謎解きが主になります。
サイバー攻撃された結果からメカニズムや用いられた手法を推測・確定する謎解き、侵入試験する際に既存ではない攻略法をあみ出す意味での謎解きなど、さまざまな謎解きがありますが、その謎解きにひとかたならぬ情熱を傾け、これに長じているのがサイバーセキュリティ分野におけるハッカーです。
対して実務者はもっと実際的で、定番・王道を漏らさずにこなす、バランス良く実装する方が主で、謎解きはあっても従であり、むしろ謎解きが必要無いように仕事をすることが尊ばれます。CYDERやRPCIは謎解きもありますが、それはあくまで知らない人、経験したことが無い人にとっての謎を解くことであり、理解したら知識になるもの、実務面で役立つスキルを身に付けることが主ですので、「ホワイトハッカー」からもたらされるイメージとは少なからず異なると考えます。
一方SecHack365はものづくりを主眼としており、研究を作り出すという意味での研究者も含むクリエイターを支援するプログラムです。こちらも謎解きが皆無ではありませんが、ハックとは別な謎解き、つまりどんなものを作ったら世の中のこの課題を解決できるのか等の謎を解くものですので、サイバーセキュリティのハックとは少し異なります。

 

なんとなくメモっとく(笑)。

SecHack365修了生の声まとめ

今まさに課題に取り組んでる最中かと思いますが(笑)、後押しのために修了生の声を集めてみました。

 

Eさん(社会人)

 

Aさん(学生)

 

Rさん(学生)

 

Kさん(学生)

 

藤原出帆(いずほ)さんと玉田遍(あまね)さん

edtechzine.jpたくさん(笑)

japan.zdnet.com

2021年度優秀修了生の声。

sechack365.nict.go.jp

ついでに(笑)トレーナーの声も。

japan.zdnet.com

【SecHack365特別企画】「セキュリティの仕事(しごと)ってなに?」に寄せられた質問にお答えします

Q. 開発経験がほとんどなく、どの程度のスキルがあればプログラムに参加できるかという点が少々不安に思いました。
A. 手前味噌ですが、プログラム、アプリを開発しなくても良いコンテンツゼミとかコンテストゼミとかもありますよ(笑)。また、グループで開発することを目指す表現駆動コースで開発する力を持った誰かとコラボレーションする手もありますし、どのコースを選ぶにせよ開発そのものを行わずにコンセプトモデルをまとめて示すところを目指すこともできます。1年あるので、開発する力をつける学習計画を作り、開発力を身に付けるアプローチも(当然ながら)採れます。

15年前、原稿大詰めなんだけどベトナムに行った思い出

2007年のベトナムは、名の通ったホテルのWiFiもまだまだ未整備な感じだった。現地で原稿やっても送れるかどうか心もとない。なのでいろいろ前倒しにやるしかない。そもそも単著のお仕事を頑張って仕上げなきゃならないときにベトナムなんか飛んでるからそうなるのだと言われたら返す言葉も無いけどね。どのくらい前倒しかと言うと、当時は飛行機からネットは使えず、飛び立つ直前の成田空港でとにかく原稿を送らなきゃあかんてことで行く電車の中でも書き、やっとのことで書き上げて送信してホッとして乗機し、ベトナムに降り立った。ホテルに着いたらWiFiあるよ、と言うんだけど繋がらない。いや正確にはアクセスポイントには繋がるんだけどDNS情報が降ってこない。当時は未だ旅先用レンタルモバイルルーター的な何かも無かったので別ソリューションも無い。やむにやまれず、ホテル側から提示されていないけど見えているWiFiのアクセスポイントをいくつか試してみると、1個フリーっぽいのに繋がった。だけど電波がとても弱くて息も絶え絶えな感じ。とりあえず原稿送信した結果はどうだったかだけは確認せねばと何とかメール確認。校正的なところで問い合わせが来ていたので電波を逃さぬように最適位置である部屋の隅で立ったまま返答を書き、大慌てで送信。送信し終えたと思ったら電波が絶え、唯一使えたアクセスポイントもロストしてしまった。繋がらないことにはいかんともしがたい。まぁたぶん大丈夫やろ、と割り切ることにした(笑)。
そしてわたしはバスに乗り、街灯のせいか黄色く染まったゴツゴツのコンクリートタイルの上に降り立ち、ぬるま湯のような湿気と熱気の中スタジアムに入り、W中村に遠藤なんていう魅惑の中盤を揃えたオシムジャパンを堪能したのだった。
そのオシムさんが亡くなったということだけど、何か気難しいけどおもしろくて愛すべき厳しいお父さんが亡くなったような感覚がある。指導というか、常に考えさせ、工夫させる、油断させない、自ら設定したルールの無視を要求して一瞬たりとも頭を休ませないトレーニングのことは今も手本としている。オシムさんのサッカーや考え方に触れたことがきっかけで、セキュリティと創発、アイディアなんていう食べ合わせの悪いことを研究するようになった。残念ながらサッカーほどわかりやすくそういうことができそうな仕組みを整えるまでには至ってないし、まだまだ先は長いけど、やるべきことをはっきり認識できたのはオシムさんのおかげだと思う。

オシムさん、ありがとうございました。

www.football-zone.net

jefunited.co.jp


P.S.そういえば長らくブログ書いてるのでベトナムも書いてたわーと思い出して掘り返してみた。

sonodam.hatenadiary.jp

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「1年間のハッカソン」SecHack365、参加者募集中

2022年度参加者募集中


ここ2年はコロナ禍にあって集まって何かをすることが難しく、SecHack365の6回のイベント+成果発表会はすべてオンラインでの開催となりましたが、2022年度は何とか集合イベントを復活させようと思っています。残念ながら今のテクノロジー、ツールではオフラインのスピード感と情報量には敵わない、と思いますしね。Zoomを使えば対話はできますが雑談はとてもやりにくい。オフラインのときと質・量ともに同等のやり取りをしようとすると、1時間で済むことが2時間3時間かかってしまう。この2年、Zoomやdiscord、oViceなどさまざまなツールを試し、チャットも駆使してきましたが、集まることができなくなって失われたものを全て埋めるには至りませんでした。
一方オンラインでは動画を活用することで、ライブの発表よりもコンテンツとして完成度が高いものを提供&視聴できるようになりました。1.5倍2倍の高速視聴もできるし、同時に話者本人とチャットでやり取りすることもできる。オフラインでも部分的に行われていたことですが、オンライン強制となってむしろ大々的に仕組みに取り込み、発表の品質は上がったと感じます。また、距離の壁を超えて、時間さえ合わせればいつでも対話できるようになった、ということも大きいと思います。もちろん、もともとオンライン会議は時間さえ合わせれば開催可能だったのですが、「会ったときに話せば良いや」とどこか積極的にやっていなかった。むしろ会ったときにこそ話そう、とオンライン会議はサブ的にしか使っていませんでした。オンライン強制になり情報の地域格差みたいなのは減り、差は縮まったと思いますが、会って話すときにこそやり取りできていたものは失われたままでした。
なので、今年度はともかく集まろう、と思っています。集まることで得られるものを復活させていこうと。
SecHack365には開発駆動、学習駆動、思索駆動、研究駆動、表現駆動という5つのコースがあります。このうち開発、学習、思索、研究は基本単独プレイ。表現はグループに拘り、グループによるものづくりに挑みますが、集まる効果が最も大きいのは表現駆動、いや、グループ活動だと思っています。今年度のSecHack365のテーマはグループワークの復権。基本単独プレイである開発、学習、思索、研究も別に単独プレイだけに留まる必要は無く、コース内、あるいはコースを超えてコラボレーションしてもらおうと思います。
各コースの詳しい情報はこちら>https://sechack365.nict.go.jp/course/index.html
そして今年度の開催概要はこちら>https://sechack365.nict.go.jp/document/
募集要項はこちら>https://sechack365.nict.go.jp/requirements/
課題提出〆切は5月10日(火)12時(JST)です。
たくさんのご応募、お待ちしております。

温泉地でDoS攻撃を食らってしまった話

家の用事で急遽ある場所に飛ぶことになり、せっかくなので近場の温泉地を探して宿を取った。他に有名温泉地もあるけどちょっと冒険したくなってしまったので(笑)マイナーなところ。遠隔仕事も抱えているので夜中も風呂に自由に入れるように奮発して風呂付きの部屋にした。
この部屋風呂が大外れだった。
出る湯がぬるいのは源泉の都合もあるから仕方無い。ぬるいときは(高温の湯を供給するパイプが檜の浴槽の下に這わせてあるので、そこにお湯を出す)バルブを回してねとあったので回してみるもお湯は来ない(()内は筆者の情報補完記述)。お湯が来ないのがわかったのはバルブの手前に蛇口が付けてあって供給状況を確認できるようになっていたからだけど、一瞬高温のお湯が来たけど(汲み桶一杯分程度)すぐに切れてしまう。深夜まで様子を見たけど改善されずあきらめてぬるい湯に入って寝た。
翌朝高温湯が出なかったことをフロントに伝えたが「ガスで温めているし止めてもいないので出るはずなんですけどね」という返答。朝食後確認すると高温湯が出てきたので早速入浴した。その後用足しに外出し、昼過ぎに戻ったらまだ出ている様子なので安心して遠隔会議に参加。終わってから確認すると今度は高温湯どころか部屋のどこの湯の蛇口を捻っても一滴も湯が出なくなってしまった。浴槽付近の蛇口、高温湯供給パイプ、別にあるシャワー室のシャワー、洗面台のお湯蛇口、すべて一滴も出ない。フロントにクレーム入れたら確認に来たが、依然として一滴も出ず。のちに電話で「タンクの掃除をしたため、まだ中身が3割程度しかありません。お湯がたまるまで少し時間がかかります」と言うので「いつ頃までかかる?」と聞いたら「夕方くらいまで」とのこと。その時点で15時くらい。バッファを見て19時過ぎに確認するもなお一滴も出ず(笑)。その後は仕事に忙殺され、0時過ぎに確認したが依然として出ない。大浴場は早じまいでもう入れないのでそのまま寝た。
翌朝も同じ。結局チェックアウトまで一滴も出なかった。重要なことなので二度書いておこう。お湯が、一滴も、出なかった(笑)。しかも、すべての、蛇口から。
ここまでの仕打ちに遭うことはそうそう無い。っていうか人生初ってくらい。正直なところげんなり、いや、美味しいって思った(笑)。10年このネタで飲めると思えば(笑)。
チェックアウトのときは前日までとは違うフロントマンなので、お湯が出ない状態であることが引き継がれているかどうか様子を見ていたけど引き継がれていないようだったので「昨日の昼から一滴も出てないんだけど、栓開けた方が良いよ」と言い捨てて去った。感覚としてはまさに、「栓を開けて」。そんな感じだった。それほど容赦なく一滴も出なかった。
これが顛末である。ではなぜ「DoS攻撃」なのかというと、お湯が出ない、お湯出ない、出ない出ない、と脳内でフレーズ繰り返すうちに、出ないアルお湯サービス(Denial of Service)というのを思いついたから(笑)。出ないアルの「アル」は良くあるマンガの中国系登場人物が喋る日本語的な表現だけど、ディナイアル・オブ・サービス=サービス不能or使用不能=出ないアルお湯サービス、ってかなりイカしてると自分では思っている(笑)。そしてその理不尽さから「攻撃」というのも良い感じ(笑)。なんだろうこの何でもネタにする感はw。

なお最後に、かなりのヘビーユーザーである宿泊予約サイトで、自身初めてクレーム文を書いた(笑)。滞在期間の半分以上お湯が一滴も出なかったのだから風呂付き部屋をとった意味ないよね、という趣旨だけど、そのサイトの口コミにはホテルスタッフのレスが一度も付いていないので伝わるかどうかは疑問。そこで、例によって自分の関わる仕事に、クレームを受けることもまーまーある立場として考えてしまうわけですが、やはりマメに書き込みとかには対応するというのが良い、というか必須とすら言えそう。過剰な、言いがかりみたいなクレームに囚われると病むばかりになるけど、そうじゃないものを見つけて、課題として把握して改善していく。クレームを受け付ける口を作っておく。このあたり大事だね。常識だろうけど。
さらに言えばインシデントハンドリング、インシデントレスポンスにおいて初動対応が重要だよな、と再認識した。何でもそこに持っていくな、と言われそうだけどまさにホテルの初動対応はいくつもミスってるもんね。最初のクレーム「ぬるい」への対応は源泉の湯温のことでもあるし良くあるクレームということかも知れないけど、お湯が出ないと言われ、フロントマンが部屋まで来て事象を確認してる。ここまではホテルマンなら当然すべきことでしょうね。実際すぐ来たことは良いと感じた。問題はその後。
お湯系の管理現場に確認はもちろんしたんだろうけど「掃除をしちゃったからいったんからっぽにしてしまい未だ中身は3割。お湯がたまるまでしばらく時間かかる」「たぶん夕方くらいまで」この情報の確認と提示には課題が見える。
まずなぜ掃除をこのタイミングで行ったのか。掃除した結果こうなることを把握できていなかったのか。把握できていなかったから掃除したのだとするとヤバいけど、把握してたとしてもヤバい(笑)。平日だし、変わり者?の客が部屋の良い風呂目当てに泊まりに来たのが珍しい、というのはあるかもしれない。じゃあいつ掃除すれば良いのか、という現場の感覚もあるかもしれない。しかし結果としてお湯が全く出ないというのは、金返せと言われても仕方の無いレベルだからなぁ。
あと引き継ぎ。これは危機認識が希薄だったってことだろう。クレームを受けて現状確認し、夕方までかかると伝え、伝えたのち何も言ってこないから大丈夫だったんだろうなーという思考だったのだろう。大丈夫だったんだろうなーである意味思考停止して客への確認を怠った。客が何らかの事情でクレームを言う暇が無い、あるいは言わないでいつか来るであろう夕方(笑)を待ってる、とは思わなかった。そこがポイントかもしれない。電話一本入れるかどうかで印象は変わっただろうし、その後のホテルとしての対応は大きく変わったはず。結果的にトラブルが解消できなかったとしても、手当はできただろう。
一方美味しいこれ、と思っていた(笑)あっし自身は、どういう対応をとるか待っていたという、美味しさを深めに行っていたフシもあるが(笑)。
それにしても教訓が多い事例だった。まさに美味しい思いをしました。湯は一滴も出なかったけどね。